私たちの体は、たくさんの細胞が集まり、それぞれが異なる役割を担うことで成り立っています。ですが、多細胞生物へと進化する前は、単細胞生物が独立した個体としてばらばらに生きていたはずです。では、単細胞生物はどのようにして多細胞生物へと進化したのでしょうか。この「多細胞化」は、生命の進化の歴史において、「いきものの複雑さ」をうみだした重大な転換点の一つであると考えられます。

これまで多くの研究では、多細胞化への進化は、細胞どうしがまず集まって空間的なまとまり(空間構造)を作り、その後に役割分担が成立したと考えられてきました。これに対し本研究領域では、単細胞の段階ですでに性質の異なる細胞が存在していて、そのような細胞ごとのばらつきが、原始的な分化(細胞ごとの役割分担)を確立して、空間的に細胞が集まる前にすでに多細胞になるための素質を持っているのではないか、という新しい仮説「細胞分化first pathwayによる多細胞化」を提案します。すなわち、多細胞化を「まず集まること」から捉えるのではなく、「まず違いが生まれること」から捉え直します。

この仮説を検証するために、これまで別々に扱われがちだった真核生物研究、原核生物研究、人工生物研究、理論生物研究をつなぐことにより、単細胞と多細胞の境界を越境する新たな研究領域の創生を目指します。生き物の種類が違っても共通するしくみが見つかれば、「単細胞から多細胞へ」という大きな進化の道筋がより深く理解できるはずです。